海の向こうからやってきた、想い その1 | menu page | 裸にエプロン 考

2004年09月23日

随想

奥底にあるもの、とか、曖昧さ、とか  想いその2

下雑文の最後の、「偽善をしないよう決めた『きっかけ』」というのは
もう数年前の夏のことに遡る。

私は、他所でHPを運営していた。
今とそれほど変わらずあれこれと書きなぐっていたのだが
ある日、それをずっと見ていてくれたらしい男性とひょんなことから
メール交換するようになった。
私と同じようにバツイチで子持ちだという。
東京に在住らしく、業界の関係者で全国あちこち飛行機で飛び回っているとのことだった。
子どものこととか仕事のこととか趣味のこととか、そんな日常のことのやりとりだった。
ある日、写真の交換をしたい、と言われ、突然向こうから写真が送ってきたのだが
何かの記者会見?の様子らしく
日韓の旗の前でその彼がマイクを握っていた。
日本人じゃないのかな?
そのとき初めて思った。
その写真の彼の顔と日韓の旗…

しばらく返事に戸惑っていたら
切々と訴えかけるような詩のようなものが送られてきた。

一部だけ勝手に抜粋してごめんなさい…

「咲く花が綺麗と言え、十日を生きるか、
散る花が悲しいと言え、俺の胸に比べられるか。
来るもの欲求無しに来、去るもの未練無しに去り、
虚妄で、意味の無いこの世・・・・・・
でも、今日も息をしているのは、
種を入れたバケッツを背負って
山だ、荒野だ、種を蒔かなければならない運命なのか?
何所から聞こえてくる静かな風鈴音が、
眠れない想念を、静かに呼び戻す夜。
どうせ、人生一場春夢なのに・・・・・・
でも、種を蒔く為には今日も起きないと。」

そんなことが書かれていた。
そして後日、お詫びのメールが来た。
「頑張ってはいるつもりでしたが、ふっと僕の隣に誰もいないことに気づきま
した。(娘がいるにも関わらず)」と。
そして、実は、今まで黙っていたが、自分は本当は日本人でも在日でもない韓国人だ、と
最後に書かれていた。

『僕の隣に誰もいないことに気づきました』
この言葉は、そのときの自分の空虚な心に突き刺さりひどく胸を打たれた。
前の詩の言葉と、合わせた彼の想いがとても切々と伝わってきた気がした。

彼は
ずっと
寂しかった


そしてそれは、
ずっと言い出せなかったこと、

自分が韓国人であること

国境を越えて想いを通じさせようとするとき、
きっと彼がぶち当たる最初の壁であるらしいこと

それらのことが想像できた。

少なくともその事実に私はショックを受けていたことは確かだった。


韓国の人だから、とか、外国の人だから、とか、
自分の中でこれまで分け隔てしてきたつもりはまったくなかったし
そんなことにこだわっていないつもりだった。

なのに
正直、私はそのときとてもあせっていた。

彼は、ただのメールフレンドとして付き合うことを望んでいたわけではないことは知っていたから。
家族が欲しいことは知っていたから。
しかも彼は日本に住んでいるわけではないらしく。

このまま彼と親交を深めるわけにはいかない。。
メールではなく、実際に会っていて、好意を寄せている状況だったらもっと違ったかもしれない。
だけど、今はメールのみの関係で、簡単に引き返せる。

そう思ってしまった・・・

なんだかいろいろな複雑な感情が渦巻いていた。
だけど、それを彼に伝えることができない。
なんて言ったらいいのか分からない。
そうやってぐずぐずしていた挙句、私はありきたりな言葉だけで返信した。

今のところ私には何もできそうにありませんが
愚痴くらいは気軽にいつでもメールしてくださいね。

そんな馬鹿みたいな言葉。
今読み返しても吐き気がする。
親切ぶって書いたその返信。
こういうのを偽善と言うんだろう。

彼は愚痴が言いたいわけでもない。
メールフレンドが欲しいわけでもない。

そんなこと、これまでメール交換してきて、百も承知だったのは自分じゃないか。
私は、国籍が違うとか海の向こうにいるということを知って
ショックに思ったことを詫びるべきだったのじゃないか。
その先のことを考えることができないことをきちんと話すべきだったのじゃないのか。

彼は苦しい心の内を伝えてきてくれたのに。

自分の取り繕った親切心がとても愚かに思えて
そのとき、そんな返信をしたことをとても後悔した。

変な中途半端な言葉を送るよりもいっそ
無言を通したほうがまだよかった。
あれだけ苦しい心をさらけ出してくれた人にとても失礼なことをしてしまった。


それきり、彼からのメールは途絶えたが、
私の心の片隅にずっと苦い思い出として残っている。


だからもうその場限りの無責任なやさしさはやめようと思った。
偽善もやめたい。

いっそのこともっと冷たい人間でいられたらいいと思う。
私みたいに中途半端な人間は。


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国籍が違う方への偏見は一切ありません。
そういう主旨の雑文ではないこと、ご理解頂けましたら幸いです。

すみれ | trackback (0)

comments

生まれ育った国が違っても同じ人間だもんね。
不器用な言葉で返してしまったメール。
でも、真剣に先を考えると、その時のすみれっちの動揺は分かる・・・
でもね、彼も真剣に考えてるんだったら、もっと先の時点で
自分の国籍を言うべきだったんじゃあないかな?って思う。
みゅみゅって冷たいかな。
若い頃、付き合ったことのある人。
その日とも在日韓国人だった。
最初から自分の国籍を証して それでもいいの?
って、感じで付き合ったよ。
彼も不器用な人だったんだね。
何かうまくコメントできなくてごめん・・・

みゅみゅ : 2004年09月24日 00:52  

そうか。そんなことがあったんやな。。

でもそういう返事をする前にほんとに悩んだんじゃない?当事者じゃないおれには推測することしかできないけど。。
両方ともイタイよ。読んでて泣きそうになるくらい切ないです。だから、すみれちゃんが今のカタチの優しさを選んだことについて、同情する・・・同情って嫌な言葉かもしれないけど、うまく言えない・・・おれは中途半端だから、同じように悩んでしまうっていう意味です。それに、たぶんおれがすみれちゃんの立場ならもっと悲劇的な返事をしてしまってかもしれない。
あぁ、なにを言いたいのやらw
やっぱりなんとなく思考回路が似ているような気がします(失礼

またべぇ : 2004年09月24日 21:08  

*みゅみゅしゃん
うん、ありがとう。言いたいことは伝わってます。
国籍云々のことについてよりも、なんか自分では意識してなかった心の奥底のこと、とか、
曖昧な自分とかがぱ~っと見えてすごい嫌悪感だったんよね。。
それを誤魔化そうと中途半端なうわっつらな態度をとった自分が許せなかった。
国籍のことは、当人同士の努力次第だと思う。二人で乗り越えられるか、、
後から言うか、先に言うか、、は、私は分からない。。後々まで黙ってて結局うまくいかなかったカップルも知ってるから。。
難しいよねえ。。その当人になってみないとこれはほんとにわからないかもしれないね・・・

*またべぇ
あは、似てるかもしれないねえ、頭の中。
考え込むようで、結構単純だったり・・・笑
そう、ほんと、どうしよどうしよ、、、、って、実は相当悩んで返事出せなかった。一週間以上経ってたと思う。
で、待たせるだけ待たせて、結局あんな馬鹿みたいな返事を出すって、、最低だと思った。。出さなきゃよかったよ、、って送信した後後悔したもん。
メールって難しいよね。いろんなことが言えそうで、でもうまく伝えられなくて。
でもそのヒトの切ないツライ心境は伝わってきたんだよね。。それにうまく返せなかったことがちょっとイタイ思い出なのです。。。
だけど、自分のやなとこなんかを見つめなおすいいきっかけにはなりました。。


すみれ : 2004年09月24日 21:46  

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